――血じゃない!? イエローはその極小の視界において、波留が流す液体の色を判別していた。望遠プログラムと画像解析プログラムが彼女の視界の補助を行っている。狙撃の成否は彼女にとって即刻確認しなければならない事だからだ。 そして狙撃主は、自らの思惑が最悪の形で外れた事を知った。吐き捨てるような思考が咄嗟に現れる。 ――やっぱり義体じゃないか!偽の情報でも掴まされたのか、あのクラッカーが! 彼女が知る銀髪の少年に対し悪態をつく。しかし電通と言う形式で厭味を言う暇は、現状の彼女にはない。狙撃主として早急に、この事態に収拾をつけなければならなかった。何せ、自分の判断で目標を変更した挙句に、それが誤りだったのだ。 波留は生身ではなく、肩口を撃ち抜かれてもその筋肉を収縮させていない。よろめいたものの再びしっかりとその足で直立し、メモリースティックから手を離していない。狙撃の結果、全く状況を変化させていない。 イエローの照準の中、波留は身じろぎするように頭を動かした。長い黒髪が微かに揺れる。彼女は銃口を微かに上げ、そこを狙った。 今度は確実に仕留める。 その覚悟と共に、最初の狙撃から数秒のうちにイエローは再び弾丸を放っていた。 |