病室に立ち尽くす私の目の前には、彼が横たわっている。
 ベッドに寝かされている彼の身体には包帯が巻かれ、様々な処置がなされていた。その傍らには点滴が吊られ、彼に与えられている。
 今は酸素マスクなどは装着せずに只眠っているようだが、その顔は蒼冷めている。容態こそ安定しているようだが、それが即快方に向かっているとは言い難い状況らしい。
 私はその傍らに立ち、彼を見下ろしていた。内心ショックには違いないが、だからと言って泣くのは何処か、何かが違うと思っていた。その場に座り込み絶望に打ちひしがられるとか、彼に縋って泣き叫ぶとか、そう言う話だけではなく、只涙を流す事すら違うような気がしていた。
 隣に立つ医師が深刻そうな表情を浮かべ、私に彼の怪我の状況を説明している。しかし私はそれを半ば聞き流していた。自らの考えに浸っていた。

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