平和なお茶会は終わり、ひとまずカップ類は片付けられた。 「じゃあ夕方まで私、居ますから。波留さん、何かしますか?」 ミナモはそう言い、波留の車椅子の後ろに立つ。笑顔を浮かべて波留の顔を覗き込んだ。 「俺は…うん、ちょっと相手して貰えるか?」 妹に呼応するように、ソウタはそう言った。キッチンでカップ類を洗っていた彼は、隣に居たホロンを見て外を指し示した。それにホロンは笑みを浮かべたまま頷いた。それに気付いたミナモが噛み付く。 「ちょっと、ソウタも何で残るのよ」 「俺は午後から暇になったんだ。先生との予定がなくなったから」 ソウタのその台詞に、ミナモは手をぽんと合わせて叩いた。思い出した風に波留に言う。 「――あ、そうだ。波留さん、久島さんとさっき会ったんですよ」 「…久島と?」 波留は怪訝そうな顔をする。少女の口から出てきた旧友の名を繰り返す。そして、訊いた。 「ミナモさん、電理研内に用事でもあったんですか?」 「そうじゃないんだけど…ソウタが久島さんに用があるって言うから、ついでに電理研の近くまで付き合ったんです。そこからならこっち行きの水上バスも出てるし」 「電理研の外で会ったんですか?彼が日中に電理研に居ないなんて珍しい事もあるものですね」 「外と言っても玄関先ですけどね。でもその後何処かに行っちゃいました」 「何かあったんでしょうか…しかし何かあったにせよ、彼本人が出向くとは珍しい」 波留は腕を組んだ。考え込むが、彼はたまに依頼を回して貰う委託ダイバーに過ぎない。特別に電理研の事情に詳しい訳でもないため、情報が不足している。 「急いでたみたいだし、そうなんじゃないでしょうか」 「メタル内の調査なら僕に回してくれて良かったのに」 「もう…働きすぎですよ、波留さん!」 ミナモは唇を尖らせて波留を嗜めた。それに波留は軽く笑った。 |