髪を生乾きになるまで拭き、その後に水で洗い流した足を乾拭きしてある程度乾かす。ミッターマイヤーはその後に靴下を履き直して革靴を履いた。脱ぐ前に既にかなり走り回っていたせいで、革靴も相当に土埃にまみれてしまっているし、爪先や土踏まずなどには蹴り飛ばした土がこびり付いていた。――明日には靴を磨いて貰おうか、と彼は思う。 タオルを洗い、大人の握力に恥じない程度で水気を絞ってニールに返す。ニールは受け取りつつも明らかに嬉しそうな顔をしていた。 自分の土埃の始末がある程度終わったミッターマイヤーは、周りを見回した。他の子供達もそれぞれに汚れた自分の始末をつけているし、終わった子供達はそれぞれに歓談している。 と、フィールドの方で金髪の少年が地面を蹴っていた。この子供はミッターマイヤーの遥か頭上にボールを蹴り出した張本人で、ケネスと言う名前だった。あの状況とフットサルでの進行振りを見るに、彼がこの子供のグループのリーダーであるらしかった。 「――何をしているんだい?」 ケネスが地面を蹴っているのに興味を覚えたミッターマイヤーは歩み寄っていく。生乾きの髪が僅かに残る陽光を含む。 「ん?――かなり地面荒らしたからさ、均してるんだよ」 ミッターマイヤーに気付いたケネスは視線だけ寄越し、足元の作業は続けていた。彼のスニーカーが捲れ上がった芝生や土を再び戻していく。 「裸足のあんたなら良く判っただろ?こういう激しい遊びやった後は地面を元通りにしといてやらないと、後でここで遊ぶ時に転ぶ奴も出て来るし、第一またサッカーやフットサルでもやるとなるとボールがイレギュラーしてどうしようもない」 「成程ね」 ミッターマイヤーはケネスの地道な作業を覗き込みながら、顎に手を当てて頷いていた。最早敬語を使われない事を彼は一向に気にしていなかった。 フットサルのルール上、スライディングなどの激しいぶつかりは禁止であるために、地面が過度に削られてはいない。しかしそれでもボールを蹴り飛ばし奪い合う競技である以上、間違えて地面を蹴りつけたり走り回った際に勢いで地面に後を残してしまう事は多々あった。ケネスは可能な限りそこを平坦にしているのだ。 「今は面倒でも、後で楽しく遊ぶためには後始末は重要なんだよ。――だろ?」 「ごもっともだね」 ケネスの返しにミッターマイヤーはにっこりと微笑んだ。気付けば他の子供達もケネスのように地面の均しを行い始めている。リーダーの率先した行動に、他の子供達もついていっている――本当に団体行動を学ぶために良いスポーツなのかもしれないなと、ミッターマイヤーは感じ入った。 フェザーンの子供達も素直でいい子ばかりなのかな。この公園の子供達だけでそう判断するのは、早急に過ぎるとミッターマイヤーは判っていた。もしかしたら彼らの学校だけかもしれないし、或いは彼らの学年――もっと狭めるならば彼らのクラスのみ、教育が行き届いている可能性も否定できないのだ。 しかし、ミッターマイヤーはこのケネス達の行動を見て、本当に心地よかった。 |