この公園でこの子供達が行っていた球技は、正確に言うならばサッカーではなくその縮小版であるフットサルと呼ばれるものだった。 フットサルには正式なグラウンドは必要なく、チームの人数もサッカーよりも少なくて済むために、AD時代からサッカーと共に地道に競技人口を保っていた。今回の子供達も、本来ならばサッカーをやるはずがグラウンドが使えなかったために、この公園でフットサルを行っていた様子である。常時競技していない人間も居るが、そういう子は審判役を務めたり、選手交代要員であったりしてそれぞれに楽しく過ごしてきていた。サッカーと同じく役割分担を学ぶのに相応しい球技であると言えよう。 そして今となっては、飛び入り参加してきた「軍人のおじさん(子供によっては"お兄さん"と呼ぶ)」を混ぜて更に楽しんでいた。人数がひとり増えたと言う事は、それだけ参加出来る子供の枠が減っていると言う事でもある。が、子供達はこの軍人のボールの扱い方やフィールドを縦横無尽に疲れも知らず走り回る姿にすっかり魅了されていた。 ――軍人さーん!と叫んでパスを回してみたら、ある程度無謀なパスでも追いついて受け止めてくれる。そして周りを良く見て――或いは見なくとも――ゴール前に簡単にボールを回してくれる。とんでもない大人がここにいた。 一方、その「軍人さん」であるミッターマイヤーからの視点では、子供達は本当に元気で陽気にボールを追い掛け回していた。それを見て、相手をするのが楽しくて、彼はすっかり馴染んでしまった。 彼は遊んでいるうちにまずはマントを外し、次には軍服の上着を脱ぎ、気付いた時には白手袋も外してしまっていた。公園のベンチの一角では、それらがまるで干された洗濯物のように掛けられて放置されている。上着のシャツ一枚と軍服のズボンだけでは、彼の階級は最早判らない状態になる。もっとも、軍服をきちんと纏っていた状態ですら、子供達は彼の階級を全く把握していない様子であったから、今更無意味なのだろう。 そしてしまいには、革靴と靴下まで脱いでしまった。走り回っているとどうにも足が痛くなってきて、地面の芝生を見る限り裸足でも大丈夫だと判断したからだった。一旦子供のひとりと交代した隙に彼は靴などを軍服の並びに置いてしまい、復帰した時には子供達に指差されて大笑いにされた。 「――本当に軍人なの?」 「軍服脱ぐだけじゃなくて靴まで脱ぐなんて、そんな大人いないよ!」 「ちょっとは遠慮しないと、上官に見つかったら大変だよー?」 …などと、子供達は遠慮を知らず、爆笑しながらミッターマイヤーにそう言っていた。それに対してミッターマイヤーも笑う。フィールドに駆け出すと、裸足から伝わる芝生とその下の地面の微妙な凹凸の感覚が心地よい。――子供の頃はよく裸足になってあちこち駆け回ったものだと、思い出してまた破顔した。 |