双璧副官ふたり


 フォルカー・アクセル・フォン・ビューローと、ハンス・エドアルド・ベルゲングリューン。
 それぞれ双璧の副官。多分双璧者にはかなりの人気がある連中で、キャラの掘り下げもかなり行われているのではないかと思われる。

 どっちも同じ歳かそこらだろうなあ。双璧とは5歳位は上かなあ。互いに上官から信頼されていていい感じだなあ。酒飲む時は互いの上官自慢にいつしか突入してるのかなあ…とある意味双璧コピーみたいな感じですな。

 ビューローはフォン持ちですから貴族ですが、そこまでいい身分ではなさそうです。が、暮らしに苦労はなさそうです。資産持ちの中流貴族の三男坊って印象。
 長男ではないから家督は継がないので、家に箔を付けるために軍人になってみたと言う印象。なってみたら、軍事的才能はそこそこあって、上官にもそこそこ馴染める性格だったようで、すぐに退官するのは勿体無い、退官してもどうせやる事ないんだしと自覚。普通に出世していく最中にキルヒアイスの部下になって正史に顔を出す…てな感じか。
 そこでベルゲンに出会って仲良くなると。上官は平民だけど、ビューロー自身がそんなに差別意識持ってないから普通に才能のみを評価できる人間で、自然にベルゲンに対しても好意的な扱いが出来ると。

 ベルゲングリューンは平民で堅物。ビューローよりも1歳年上と言う印象。一般家庭から士官学校へ入学。相当に能力は優れていたのだろう。
 出世ペースは、後の階級を見る限りでは、ビューローと似たようなもんですかね…。キルヒアイスの部下になった時点で、ふたりに差はあったのかなあ。差があったら友情は成立し辛いと思うんだが。旧帝国時の平民ハンデが1年の差で埋まっていると思うか。

 こうやって想像すると、本当に双璧コピーだなあ。こっちはどっちも真面目っぽいですが。

 ベルゲンはまんま軍人タイプだと思いますが、ビューローは秘書官タイプだと思う。それこそ軍務省にいてもおかしくない程に事務能力に優れてそうです。上官が必要とする書類はいつでも揃えます、てな感じで。
 だから、ミッターマイヤーが国務尚書になった際には、あっさり自分も退官して付き合って国務省入りしそうです。国務尚書の公的秘書官。彼のスケジュール管理に穴はありません。本当に何時までも付き合いそうだ。「閣下へお仕えする事こそが私の天職だと思っておりますので」と淡々と付き従う。

 ベルゲンは…正直な人で真っ直ぐな人だったんだろうなあ。上司に対して礼を逸する事無く諫言は出来る。
 そしてこう言う人間に、ロイエンタールは本当に弱いんだろう。自分に対して真面目に接してくれる数少ない人間として、重宝してたんだろう。彼が最期に思っている「敬愛する数少ない人々」の末席に、ベルゲンは入れてやってたんじゃないかと思う。いや主席かつ圧倒的な位置を占めているのはミッターマイヤー只独りだと思うんですが。
 でも、そういう部下が、自分の後追い自決をするとは思ってもみなかったんだろうな。だから敢えて「俺はいずれこの負傷で死ぬが、卿らは死ぬなよ」と、止めておかなかったんだろうな。部下達を。

 ベルゲングリューンはロイエンタールの「叛逆」による敗死を受け、後追い自決してしまう。ロイエンタールの「叛乱」を認定した皇帝ラインハルトに対してこの上ない批判を残した上で、ミッターマイヤーの布告もビューローの説得も受け入れずに自刃してしまう。
 アニメ版の描写だが、自決直後に扉越しにビューローは崩れ落ち、悲嘆の叫びを漏らす。それを何とも言えない表情で見ているミッターマイヤー。

 結局、どんなに深い友誼があろうが、親友の「自決」を止められなかったという点では、上官も部下も変わらなかった。
 作者にそんな意図があったのかは判らんけど(ここでベルゲングリューンを生かしておいたら、ラインハルトに対する恨みにも似た感情からして復讐戦を企図するのは確実だと思われるからなあ、だからストーリー上の都合から彼を片付けておいたって考え方も出来るんだよな)、ミッターマイヤーとロイエンタールの友誼の展開を、部下で繰り返させてるんだよな。
 多分、ミッターマイヤーとビューローの間にも、そういう合意が出来ていたんだと思う。だから、今後もこのふたりはずっと付き合う事になるんだろうなと、自分の中では設定が出来ている。互いに同じ痛みを知っているからこそ。

 今後ふたりが生きていく限り、別の人間とも普通に酒が飲める関係になるんだろう。自分は歳を取るのに死んでいった親友の姿はあの時のまま、回想してしまうんだろう。
 上手く言えないんだが、痛いようでいて、切ないようでいて、誤解を恐れずに言えば「いい思い出話にもなる」…のかな。俺、片方が死んだからといってもう片方が廃人状態になるような展開、厭なんで。普通に乗り越えて欲しいからなあ。
 ああでもパラレル展開でロイエンタールの方が生き残ったら、あの依存度からしてマジでどこか狂いそうではあるが。

 アニメ版では特に触れられてなかったんですが、原作読み返すと、ビューローは最終話の時点ではワーレンから引き継いでハイネセンに居残ってるんですね。
 なら、バーラト星系を共和主義者に引き渡す実務は彼がやる事になるのかな。流石に銀河系一と思しき軍務能力を持つキャゼルヌに敵うとは思わないが、それでもユリアン達を唸らせる実務能力を見せてやれ。
 ハイネセンに居残ってる間は、ベルゲングリューンの墓に時々見舞ってやってるのかなあと思う。「閣下の分もだ」と、ロイエンタールの墓にも花を欠かせないようにしているのかなあとも。


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