ジェシカ・エドワーズ


 ジェシカ・エドワーズ。
 ヤンの知り合いかつラップの恋人を経て、ラップの死を契機に反戦運動家へ。通称「スタジアムの虐殺」で死亡。

 個人的には、物凄く立ち位置が微妙な女性だと思う。正伝後半には結局、彼女の存在及び死がもたらした事って、何もないんだよな。ヤンが全ての偶像になってしまったから。正伝後に戦争が終わって歴史を編纂するにあたって、彼女の事が再評価されるようになるのかな。

 でも彼女が反戦を叫び続ける事はおそらく適わなかったと思うので、あのタイミングで死んで良かったんだろうなと思う。ラグナロック発動以降、旧同盟が滅亡の淵に落ちつつあると言うのに、果たして反戦を叫べますかね。
 ビュコック率いる最後の同盟軍が質量共に圧倒的に劣る状態で帝国軍に戦いを挑み、降伏勧告を拒否して散ったのは、「帝国軍と戦った事により民主主義が専制主義に抵抗したと言う礎を築きたかった」からだと思われるし。イゼルローン共和政府が最後まで戦ったのは、帝国軍には「我々は屈しない」意思を見せ付けて、旧同盟の市民達には「民主主義ここにあり」と言う意思表示をしてみせたって事だし。
 どんなに犠牲が出ようとも、専制者に屈する事無く戦いを挑んで、勝ち取ったのがバーラト星系の自治権と言う「権利」なんだしさ。こんな風に「戦う事を選んだ」人間達を前にして、ジェシカは尚反戦を叫べ得たのかは謎。しかし彼女が反戦を叫べなくなった時点で、作中での彼女の価値はなくなると思う。どちらに転んでも晩節を汚すのは同じ事。

 彼女に対して厳しい視点を持ってしまうのは、やはり「お前が戦争に行け」論が非常に馬鹿馬鹿しいからに他ならない。
 お前、民主主義国家に生きる人間が、そんな事言うのかよ。ヤンが無茶苦茶シビリアン・コントロールに気を遣ってる立場ってもんがねーだろ。そんなに「国のトップが最前線に立つ事が素晴らしい」と思うんなら、お前とっとと亡命してしまえ。つーかクーデター後生き残ってたら、マジで亡命しかねんか?帝国宰相で帝国の実質的支配者が平気で前線に出向いて来ますからな。

 「お前が戦争に行け」と言うなら、彼女にこそ戦争に行けよと言いたいんだよな。だって同盟は女性士官だって居るんだからさ、女性だって軍人になれるんだ。ならお前こそが行けよ。前線で血を流し続ける軍人に申し訳ないと思うんなら、そうしろよ。それが厭なら口をつぐんで黙ってろ。
 大体彼女は士官学校の校長の娘なんだよなあ。今までもそういう立場だったのに、恋人が死んだ途端に豹変するってのは何だかなあ。じゃあ今まで士官学校から旅立って死んでいった連中に対しては、何の想像も出来てなかったって事だし。
 恋人の死を契機にノンポリから反戦にシフトしたからと言って、過去のそういう自分を清算してなきゃ意味ないだろう。少なくとも論敵には突っ込まれる所だろうな。
 突っ込まれても「でも戦争はいけないんです!」と思考停止したような反論しかしてないんかなあ。なら、生きていてもそのうち消える政治家だっただろうな。

 何だか物凄く厳しいコメントしかしてないな。でもこれ、高校生の時に読んだ際にも同じような事感じたんだよな。感情でモノ考えて動いた末に虐殺引き起こした(外出禁止令出ていたってのに集会やった事自体、軍の出動起こされても仕方ないだろ。そしてクーデター起こした連中が最早まともでない以上、出動したが最後どんな帰越を見せるかも想像できたはずだ)、すげー胡散臭い女だなー、と。今読み返すと、どう見ても「プロ市民」か。
 つーか「嫌いなキャラ居ません」って俺表明してるけど、ここまで厳しい評価しか出来ない彼女の事は「嫌い」なんだろうか。そんな意識はないのだが、世間一般的に見たら好意的な評価が出来ない時点で「嫌い」と表現すべきなのか。


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