| 果たして本当に遠い未来にロイエンタールが妻を迎え、子を持つかはミッターマイヤーには判らない。正しく神のみぞ知ると言うべき世界であった。しかしそうなれば良いとは彼は常日頃から思っている。 妻になるべきはどのような女性なのだろう――彼はふと思い、以前の会話が脳裏によぎる。 ――あの女自身に罪がある訳ではないからな。 彼は自分の口から出た台詞を思い出していた。 ミッターマイヤーには正直、彼女はロイエンタールに相応しい女性とは思えなかった。しかし、現にその女性がロイエンタールの心を僅かに掴んでいるとするならば、どうだろうかと彼は思う。男女の機微など彼には不慣れな世界であるが、通常の人間心理を把握する事には長けている。深い恨みとは、それだけ相手に対する執着を意味する。ならばそれが愛情に昇華してしまう事もあり得るだろう。 問題は、恨まれている側のロイエンタールがそれを受け止める事が出来るかであった。が、彼がその女を消極的にであっても自宅に置いていると言う事実は、捨てては置けない事実だった。本当にどうでもいい相手ならばそんな待遇にはしないのではないか――ミッターマイヤーはそう思う。が、それは贔屓目なのかもしれないとも考える。 彼は廊下を歩きながら溜息をつく。髪を無造作に掻き回しながらふと彼女の顔を思い出そうとした。が、彼は彼女と顔を合わせた事がないと思い出す。会話すら交わした事はないし、そもそも親友との酒の席においてもあまり触れたくない話題だったので間接的にすら知らない相手であった。 だから、そこまで思い入れるべきではないのかもしれない。 が、否定すべき女性でもないのかもしれない。 遠い未来に何が起こるか判らないが、ロイエンタールが「あの女」に惹かれる事になれば、やはり応援してやろう。ミッターマイヤーはそう結論付けた。 昔の政敵の一族の女性と、新帝国の最高幹部が婚姻関係になるとすれば、それもまた彼が目指す「平和」の証左であろうと思ったからだった。もっとも、旧帝国の皇帝達のように政略結婚に拠るものだとすれば、彼は反対するだろう。あくまでも当人同士が惹かれ合った結果であって欲しいと願った。 ――他人を結婚のネタにするとは、何様だろうな俺。 ふと彼の脳裏にそんな感想が駆け抜け、苦笑せざるを得なかった。 ともあれ彼は出来うる限り、周りの人間全てに幸せになって貰いたいと思った。いずれは同盟も併呑してしまうかもしれないが、そうなった時には同盟側の星系に住む民達も笑顔で暮らせる国体を作り上げたいと思っていた。 ミッターマイヤーは、妻や今日出会ったフェザーンの子供達の笑顔を色褪せたものとしたくはなかったし、遠い未来に親友の別荘で家族ぐるみで付き合う光景を、単なる夢想にしたくはなかった。 |