チョコレートの日
 元帥ともなれば、軍務以外の公務も数多い。明日の朝、俺達は幼年学校の視察に向かう事になっている。ちょっとした講演程度ならば将官段階で既に各地に呼ばれる事があったので、視察と言った仕事に特に不慣れな訳ではない。
 今回、学校側から寄越された招聘希望が午前中だった。どうやら新王朝開闢が実現したものの今までの戦時の皺寄せがあるらしく、カリキュラムが厳しい事になっているらしい。ならば我々も無理して招聘せずとも良かろうに…とも思うが、新帝国の軍務を担う人間が将来の将兵の前に顔を出す事で憧れを喚起したいと言う事だろうか。
 そのため、我々は元帥府に出勤せずにそのまま出向く事にした。だから、互いに雰囲気として、どちらかの家に泊まる事になったのだが…こうなるとミッターマイヤーの奴が喜々として俺を誘うのが常だった。そんなに奥方の料理を俺に食わせたいのか。
 翌日は視察のみならず、子供達の前に姿を見せて講演も行わなければならない。そのため普段以上に酒の匂いをさせる訳にはいかない。だから、今晩は酒抜きで親友と歓談しなければならなかった。正直つまらんが、仕方がないので明日の書類を携えて、半ば仕事として会話する事にする。

 すみれ色の瞳を持つ奥方は、普段通りに夫とその親友を笑顔で迎え入れる。そんな彼女にミッターマイヤーは前述の事情を手短に話し、今晩は酒は必要ない旨を告げていた。俺はそんな彼女に挨拶をして、夫に続く。
 ミッターマイヤーにいつも通りに居間に通された。良く片付いた部屋に備え付けられているソファーに、俺はいつも通りに腰掛ける。
 …いつもならば、傍の棚に収められているブランデーかウィスキーがまず家主の手で出されるのだが、今晩に限って言えばそれはあり得ない。習性として俺は棚に視線を寄越してしまっていたが、それを思い出した。全く、酒飲みの習慣には困ったものだ――と俺は自身に苦笑を向けたが、親友に目をやるとどうも棚の前で立ち止まっている素振りを見せていた。
 俺と視線が合うと、奴からも苦笑が漏れる。どうやら、酒飲みの習性を押さえ込めていなかったのは、俺だけではなかったらしい。

 然程時間が経たないうちに、奥方がトレイに色々と乗せてやってきた。何度も言うが今晩は酒抜きのため、ワインセラーから上質のワインの差し入れなどはない。
 奥方がトレイから差し出した、良い香りがするコーヒーがその代わりらしい。砂糖やミルクと言ったものは準備されていない。俺達は何も入れず、常にブラックで楽しむ事を彼女は随分昔に学んだからか。食事はまた後で持ってくるつもりだろう。それが、俺がこの家に呼ばれた際の常だった。
 俺は彼女に礼を言い、コーヒーに口をつける。――相変わらず旨く淹れるものだと思う。向かい合って座っている親友に目をやると、あちらもコーヒーを楽しんでいる。満面の笑顔を浮かべながらコーヒーを飲んでいる姿には、少々閉口しないでもないが…。
 ――とか俺が思っていたら、今日はコーヒーと共に、何やら他の皿が差し出されてきた。俺の目の前にひとつ、奴の目の前にひとつ。口元に笑みを浮かべたまま、奥方が白い手でそれらをテーブルの上に置いていた。
 俺の目の前に置かれている小さな皿には、茶色い小さい塊が数個。指先で摘める程度の立方体で、それに絡むように細く装飾がされていて――。

「――何だい?これは」
 俺の気持ちを代弁するかのように、夫が彼女に問い掛けた。
「チョコレートですわ」
 笑顔で奥方はそう答えた。――まあ、見たままだ。俺にもそれは判っていた。
 俺が判らないのは――女子供相手じゃあるまいに、何故いい歳した男ふたりにこんな甘い代物を寄越すのかと、そういう事だ。俺は言うに及ばず、ミッターマイヤーですら特に甘い物を好むような男ではない。長い付き合いなのだから、彼女もそれは判っているはずなのだ。なのに何故今日に限って唐突に…。
「君が作ったのかい?」
 夫は直接にはそんな疑問を訊く気はないらしい。彼女に向けた新たな質問は、それだった。
「ええ。何でも明日は女性が大切な方にチョコレートを贈る日らしいですよ。最近、図書館で昔の本を良く借りているのですが、そう言った記事を見かけましたの」
「…へえ。知らなかった」
 妻の説明に、ミッターマイヤーは意外そうな声を上げた。
 それは俺も同じ事だった。口の中でほうと言葉を出してしまう。――俺も昔から書物をよく読んではいるが、そのような記事は目にした事がない。何らかの民間伝承だろうか?
 どの時代で、どの地域で行われていた慣習なのかは判らないが、一般的な書物に取り上げられないとなると、相当に限定された地域や時代の出来事であるように思えた。だから、彼女が目にしたのも「ちょっとした豆知識」程度の記事なのではないだろうか。
 ともあれ、彼女にとってその記事の出典自体は全く大事な事ではないらしい。だから、それ以上は語らない。夫に指摘された事が嬉しいのか、両手を合わせて満面の笑顔を浮かべ、台詞を継ぐ。
「ですから、おふたりにと思って。作ってみました」

 ――ちょっと待て。
 俺はそう、口を挟みたいのを、何とか堪えた。
 俺も、彼女にとっては、大切なのか?
 待て。落ち着け。
 目の前に夫を迎えながら、他の男を夫と同列に並べるとは…どんな神経をしているのだこの女は。

「そうなのか。嬉しいよ」
 ………夫は、全く気にしてないらしい。妻の台詞を訊いても動揺も何も見せない。むしろ――エヴァは自らの親友を尊重してくれているとか何とか思って、喜んでないか?
 どうやら俺はこの夫婦の間に割り込んでも一向に気にされないらしい…――のか?相変わらず、訳が判らん夫婦だ。

 ともかくこれで彼女は俺達の前から立ち去って行った。次は、夕食を携えて来ると思われる。
 目の前に残されている皿に、俺は視線を落とす。このような甘い物を茶の類と共に出されるのは、子供の頃以来であるような気がする。あの頃は使用人が色々と作ってくれたもので、おそらく味も現在同様に上々であっただろう。
「――良かったら、食べてみてくれ」
 対面の親友が俺にそう勧めてくる。既に奴の手にはチョコレートが一摘みされていて、それを口元に導こうとしていた。
 子供じゃあるまいにとは思うが、喰えない程に嫌いな訳ではない。子供の頃はどうだか忘れたが、今は甘い物はそれ程好きではなかった。が、付き合いがある以上はひとつは食べておくべきだろうし、目の前に並んでいるのも数個だ。その程度なら、付き合いとして全て食べる事も出来るだろう。

 そんな風に妙な引っ掛かりを感じつつ、俺は目の前の皿からひとつチョコレートを摘み上げた。
 チョコレートの日は明日だと彼女は言っていたが、早々に準備していたのか。チョコレートはひんやりとした感触を指に伝えてきた。どうやらかなり前から冷蔵庫で冷やして固めていたらしい。
 茶色い物体を口元まで持って行った。軽く歯で銜え、半分程度を齧り取って口の中に放り込む。チョコレートは口の中でやんわりと溶けて行く。指先に持つ片割れも体温で軽く溶けてきているらしく、べとつきが感じられた。
 口の中で溶けるチョコレートには、それ程甘さはなかった。むしろ、カカオの本来の味であるほろ苦さが前面に出てきているように思われる。更にはリキュールの類と思われる酒の味が微かに広がった。それらに、所謂チョコレートの甘味が上手い具合に絡んで上品な味わいを醸し出している。どうやら、子供向けの味ではない。
 残っていた片割れをまた口に入れ、コーヒーを口に含んだ。ビターチョコレートと言う区分になるであろう味だったが、ほのかな甘味もある。それがブラックコーヒーの苦味と上手く合っていた。やはりあの女性の料理の腕はプロ並なのだろうか。通常の料理だけではなく、菓子職人としてもやっていけるレベルであるらしい。

 …期待に満ちた視線を対面から感じた。この家に来ると、良く体験する視線の類だ。
 だから、俺は顔を上げた。すると、案の定、蜂蜜色の髪を持つ男が俺をじっと見ている。その視線は俺からのリアクションを期待しているようだった。
 俺はその期待に応えてやらなくてはならなかった。コーヒーカップから口を離し、薄く微笑んでみせる。
「――ああ、旨いぞ」
 効果は覿面だった。目の前の男は俺の反応に、心底嬉しそうな顔をした。軽く腰を浮かせる。飛び上がって喜びそうな勢いだ。
「それは良かった!やはり卿の口にも合うのだな」
 その後に続く言葉はいつも決まっているのだが、最近はそれを省略してくれる事も増えたので助かっている。奥方の料理が、奴の定義では最高なのはもう散々理解させられた。まあ、奴が喜ぶツボを充分判っているのも、付き合う上で非常に助かってはいる。
「そうだろう?甘さ抑え目で旨いだろ?」
「ああ、そうだな」
 とは言え奴も台詞のバリエーションには困らないらしく、暫く自慢話が続くようだ。俺も適当に流しておく事にする。
「コーヒーとも合うし、今晩酒抜きで丁度良かったよなあと思うよ」
「ああ…」
 楽しそうに語るミッターマイヤーに合わせて軽く相槌を打ってやりつつ、俺はコーヒーカップに口をつける。
「まろやかだから、生クリームでも入っているのかな?俺は料理は良く判らん」
「そうだろうかね」
 我ながら、さして関心がない声を出している。とは言え軽くべとつく指で、もうひとつチョコレートを摘み上げた。嫌いではない味だが、コーヒーと共に食べた方がより旨い。そのコーヒーは…そろそろ切れかけか。

 俺に合わせるように、ミッターマイヤーも自分の前の皿からチョコレートを取り上げる。それを口の前に持って行き、しみじみと言った。
「まろやかさ加減と、中のナッツが上手く合ってるよなあ…」
「――……は?」
 俺はその奴の台詞に、声を上げていた。
 その時には、奴は持っていたチョコレートを軽々と口の中に放り込んでいた。口の中で齧ったらしく、硬い何かが割れるような音がする。
「…ナッツ…か?」
 馬鹿のように、俺は親友が口にした言葉を繰り返した。
「ああ、この食感はどう考えてもそうだろ?」
「いや…俺の方にはそんなものは入っていないのだが…」
「え?そうなのか?」
 俺の発言に、今度はミッターマイヤーの方が驚いたような素振りを見せた。
 確かに俺の方のチョコレートは、リキュール入りのビターチョコレートである。少なくとも、奴が言うナッツなどと言ったものが混入されているような食感は全くしない。チョコレートのみだ。
 では奴が勘違いしているかと言えば、今の奴がチョコレートを齧った音を聴く限りでは、そうではないだろう。確かに今の音は、ナッツらしきものを齧ったような音だ。
 まろやかと言えば俺の方もそうだし、甘さ控え目と言うならばそうだろう。しかし、ナッツは俺の方のチョコレートには、どう考えても入っていない。
 小首を傾げ、奴の皿を見やる。すると、外見からして俺の方のチョコレートとは違っていた。俺の方は正方形であったが、奴の方は楕円形だ。その周りの細かいチョコレートでの装飾も、俺の方は同じ色であるのに対し、奴の方は白い。別にホワイトチョコレートでも用意していたのだろうか。
 ちらりと視線を上げると、ミッターマイヤーの奴は俺の皿を見やっていた。互いに、互いに用意された皿とその上に並べられたチョコレートを見比べる。どう見ても、差異がある。

 奴の方も興味津々と言った風に俺の皿を見やっている。俺の先入観のせいだろうか、何やら奴の瞳が妙に輝いているように思えた。子供のそれのように、目新しい菓子に興味を示すかのように――。
「食べてみるか?」
 半ば苦笑気味に、俺は皿を手で指し示した。
 果たしてミッターマイヤーは表情を明るくさせる。正に子供還りしたかのような顔だ。元々の童顔が更に際立っていた。
「じゃあ甘えさせて貰おうか。――卿も俺の方のを食べてみろよ」
「ではそうさせて貰おう」
 にこやかに笑うミッターマイヤーの顔を見ていると、こちらも微笑が浮かんでくる。だから素直に俺も奴の誘いに従った。テーブルの上で俺達の手が交差するように動き、それぞれの相手の皿に伸び、相手のチョコレートを1個摘み上げた。
 俺は摘み上げたそれを口元に持ってくる。先程と同じように、まずは半分だけ齧り取った。その感触はチョコレートだけではない。奥の方にもっと硬く、香ばしい物体が感じられた。それごと歯で噛み割ると、いい音がした。確かにナッツの感触だ。
 噛み締めた事でチョコレート自体も口の中に広がる。それに伴い、甘い味が感じられた。生クリームの成分らしいまろやかな味わいと共に、上品な甘さが来る。それは俺の皿に乗せられたチョコレートからはあまり感じられなかった味だった。
 逆に言えば、俺が先に食べたチョコレートから感じられた僅かなほろ苦さやリキュールの風味は、このチョコレートからは全く味わう事が出来ない。どうやら、形だけではなく明らかに製法を変えているらしい。

 奥方は、俺と夫とで、与えるチョコレートを変えたのか。
 彼女の意図は何だろうか。
 無論、彼女にとって愛するのは夫であり、俺はその夫の親友に過ぎないから、もてなしているだけだろう。だから味に差異をつける事は不自然ではないのだが…あまりあからさまでは礼を逸する事になろうし、ふたつを食べ較べた印象としてはどちらもプロ並である。俺の方で手を抜いているなどと言う事は、一切ないと思われる。
 が、しかし………俺はカップに残ったコーヒーを口に含んだ。量が少なくなった事で若干冷めてきていた液体は、口の中で溶けていたチョコレートとは混ざり合わない。むしろ熱を逃がして半ば固まらせようとしていた。
 生クリームでまろやかな味わいで、少々甘ったるい。子供向けに近い味であるように思えた。だから俺はコーヒーでそれを誤魔化して流し込もうとした。
 全く…子供騙しな味だ。確かに俺には合いそうもない。どちらかと言うと、俺の皿に並べられたビターチョコレートの方が好みだった。
 が、いい歳した男が、このような甘くて生クリームが効いたチョコレートを好むものだろうか?この家庭には子供が居ないのだから、奥方も菓子はそれ程頻繁には作るまい。だから、入手したレシピが2種類あって、とりあえず両方とも作ってみたのだろうか?
 ――と、そんな事を俺が考えていた時だった。

「――…なあ、ロイエンタール」
「…どうかしたか?」
 微妙に情けない声がした。親友が発した台詞であるが、それにしても普段の口調とは違う。だから俺は怪訝そうに訊いてやった。
 すると、蜂蜜色の髪をした俺の親友は、眉を寄せて俺に言った。
「…こっちのチョコレート、少し苦味がきつくないか?エヴァが作ったにしては、失敗作なんだろうか」
「…は?」
 俺は口元からコーヒーカップを外した。少々呆れたような声を出してしまう。
「卿は子供か?」
「何故そうなる。チョコレートと言えば、甘いものだろう?」
「そういうチョコレートは子供向けだ。こちらのチョコレートは酒も入っているのだぞ?大人が食するに堪えうるものだ」
「俺はこっちは苦手だなあ…」
 ――前言撤回だ。あの奥方は、判ってチョコレートを作り分けている。
 何だこの男は。子供が喜ぶようなチョコレートの方が好みなのか?そんな印象はまるでなかったぞ?確かに男ふたりで食事したり酒を飲んだりする際にはあまり甘味を摂る事はないので、今まで発覚するような事ではなかったのだろうが…。

 それから奥方がやってきて、にこやかに食事を準備してくれる。
 居間のテーブルなのでそれ程広い訳ではないので、皿の数は多くはない。その都度入れ替えにやってくるつもりだろう。今日は酒は無しなので、ミネラルウォーターやコーヒー入りのポットもお目見えしてきていた。
 食事の前に一旦口の中の甘味を追い出したかったので、俺はコーヒーをひとまず頂く事にした。空間に芳醇な香りが漂い、口に含むとそれが広がる。
「――チョコレートはいかがでしたか?」
 笑顔で彼女が訊いて来るので、俺も少しだけ微笑んで返してやる。
「ええ、リキュールが効いていて美味しいですよ」
「それは良かったです」
 両手を合わせて、彼女は嬉しそうに微笑んだ。
「――俺はこちらの方が甘くて好みだな」
 彼女の夫が片手を挙げて主張した。
「ああそうですの?――本当なら明日、あなたに幼年学校の生徒さん達に持っていって頂いても良かったのですが、流石にそんなに大量には作れなくて」
 …幼年学校の生徒数は1000人は下らないはずだ。ひとり1個にしても、全員に行き渡る数を作るにはそれこそ専門菓子店並の労力を使う事になるだろう。少なくとも、奥方独りではとても無理だと素人考えでも判る。
「ですから少しだけ砂糖を控えて、ウォルフのために作ってみました」
「そうなのか。――折角だから、うちの前を通る子達に配る程度の事はしてもいいんじゃないかな」 「それもいいですわね」
 夫婦で笑顔を浮かべつつ、そんな暢気な会話を交わしている。
 という事は、ミッターマイヤーのチョコレートのベースは、子供向けチョコレートだったと。そういう事か。これでも砂糖を控えているのか…俺が余程甘さを苦手にしているのかもしれないが、奴の好みが子供側に傾いている事は否定しようがない事実だろう…。
 更に、空恐ろしい事実に気付いた。
 彼女は、俺のために別のレシピを準備して、別のチョコレートを作ってくれたのだ。夫の親友に対する礼儀と言う奴に違いないのだが…彼女が言うには、俺も彼女にとっては「大切な人」らしいのだ…。
 ――付き合いきれん。
 俺の心中に、こんな台詞がよぎる。コーヒーを一気にあおった。口の中の甘さごと、黒い液体を喉に流し込んだ。



 ちなみに後日、俺も気になっていたので自宅の書庫から各地の歳時記や風習の本、豆知識をまとめた本などを漁ってみた。
 その結果、どうやら「チョコレートの日」は諸説はあるようだが、AD時代の地球のとある地域に100年未満の短期間根付いた習慣であるらしいと判ってきた。
 曰く「大切な異性に、女性がチョコレートを贈る日」となっていた。
 断じて「大切な人」などと言う曖昧なものではなく、恋愛感情を持ち思い焦がれている男に、女が思い詰めてチョコレートを手渡す一大イベントであったようで…――。
 ………俺は、その説をあの夫婦に報告するのは、止めておこうと心に決めた。
 大体、彼女から「大切な人」認定を喰らうだけでも付き合いきれんのに、彼女はそれ以上の可能性を示唆する行為を図らずもやってしまったのだと知らせるのは、色々な意味で嫌だ。我々3人の関係で、余計な波風を立てたくはない。
 幸いにも現在の新帝国暦(或いは宇宙暦)の時代において、この風習を知る者も少ないらしい。そのため、幼年学校の視察を終えた俺の元にチョコレートが大量に届くと言う事態にはならなかった。ありがたい事だ。これからも、そんな面倒臭い風習が復活しない事を祈ろう。

 あの奥方からのチョコレート攻撃も、今年だけで終わって欲しいと心底願っている。

 約1週間遅れましたが、バレンタインネタです。
 ここまで遅れたのにどうよとは思わないでもないですが、折角ネタ出しして途中まで書いたのにお蔵入りにするのは勿体無いと判断しました。
 とは言え、来年もバレンタインネタを書けるかは、謎です。
 だってこの時点で新帝国暦で元帥だもんな。その次の年、ロイエンタール死んでますもん。バレンタインチョコレートを渡したのは、この年が初めてだという事になってますし(基本的にこのサイトの小説は原作・アニメ準拠の上に、全てが時系列として繋がるように辻褄を合わせるように心掛けています)。

 …って、改めて年表チェックしたら、新帝国暦1年は7月から始まるのか!
 そして12月には、高官連中からフェザーン入りで、エヴァは遅れて翌年8月にならないとフェザーン入りしないよ!その頃にはロイエンタールはハイネセンで総督やってるよ!
 ま、まあ、2月14日がバレンタインデーとして伝わってるとは限らないって事で、納得して下さい。

 次の機会があるとすれば、別のカプでネタ出しするか、ロイエンタール死後で夫婦バレンタインをやるしかないですね。

 相変わらず疾風夫妻に振り回される色目さんです。やっぱりこういう関係が大好きなのだなあ俺と思います。
06/02/20

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